2009年

10月

31日

救荒作物

 あまり耳にしない言葉ですが、「救荒作物」とは、「米・麦」のように主食となる作物が凶作のときにも生育し、収穫できる農産物のこと。

 

天候不順に強い「粟・ひえ・そば・甘薯・馬鈴薯」などがその代表的な作物であり、生命の糧として人類の危機を救ってきた作物です。

 

 

 人に例えるならば、「縁の下の力持ち」といった「地味だけど頼りになる人」のことでしょうか。

目立ちたがり屋さんが多い昨今、自我が強く、数的にも多い、いわゆる「自己中族」が繁栄している現代にあっては、希少価値のある方々にも例えられます。

 

 

 時代は移り、今日では「美味いか、美味くないか?」が食べ物の価値を左右します。「多収に旨いものなし」が本来の性質です。

農業技術を駆使し、品種改良した「甘薯」は甘く、ほくほくした食感など、食味も改善され、「収量よりも味」という現代の価値観が反映されています。

 

 

 九月初めに、岩手県九戸郡軽米町の岩手県農業研究センター「県北農業研究所」を視察させていただきました。この地域は夏場でも冷涼な気候を生かし、ほうれん草の一大産地が形成されており、研究センターは研究や生産指導を行う農業研究施設として重要な役割を果たしています。

 

 

 福岡を発つときの最低・最高気温は20度から30度でしたが、

岩手県では、10度から20度が最低・最高気温でした。JR二戸駅に降りたとき、気温は15°くらいでしたので、思わず「ぶるっ」とくるほどの体感温度でありました。10度にも及ぶ温度差には驚かされました。

 

 宿泊地も、軽米町(かるまいまち)で、山間(やまあい)の清潔でコンパクトな町でした。ちょうど翌日、「全国雑穀サミットinかるまい」が開かれるということで賑わっていました。お世話になった滝村屋旅館で、女優の竹下景子さんに良く似た女将さんに、このサミットの意義などを聞くことができました。

 

「白米だけよりも、雑穀を入れたご飯を食した方が健康にも良い」ということで、

この地では、「粟、ひえ、アマランサス(南米産の赤い雑穀)」などの雑穀を栽培され、米に混ぜて、雑穀米として普段に食されていました。

 

 左党には有難いのですが、町興しの一環ということで、

雑穀焼酎まで造られています。すっきりとした雑味のないストレートな飲み口で、盃を重ねても最初の感覚を保持できる飽きのこない飲み心地でした。試飲されることを是非、お勧めしますが、私のようなブレーキの甘い飲兵衛は、飲み過ぎないように注意が肝要です。

 

 

 雑穀を入れた米を炊き、雑穀米としていただき、雑穀の健康機能性を生かすというものですが、

軽米町の長老たちに言わせると、「ようやく銀シャリが食べられるようになったのに、今になって、またしても雑穀かい?」という声も聞かれ、この地のかつての実情が偲ばれます。

 

 「やませ(=山背)」という春から秋にかけて、オホーツク海気団は冷たく、湿った北東風をこの地に運びます。

この冷たい風が農作物に打撃を与え、いまでいう農業指導員が本職だった宮沢賢治さんが、童話を書く寸暇を惜しんで、冷害に強い米の品種を作るため汗と涙を流した土地柄でもあります。

 

 

 雑穀の素晴らしさを否定する気も、「救荒作物」が必要とされた時代の再来を望むわけでもありません。

さりながら、美食家と食通が溢れる今日、他方で「グルメとダイエット」という二大勢力が巷を闊歩する現代は、なんだかとてもへんてこな時代なのかなと思ってしまいます。

 

 いずれにしても、食味が最優先される価値観は、素直に受け入れられません。

魚や家畜、野菜などの生命をいただくことでしか、生命を維持できない私達の宿命を忘れてはならないと思います。

秋の夜長に名月を愛でながら、食の原点を振り返り、あれこれと思いを馳せてみるのも一考ではないかと思う次第でありますが、いかがでしょう。

 

文責:福岡大同青果(株) 営業促進部 部長 寺田秀三

福岡大同青果(株)は福岡市中央卸売市場青果市場の卸売会社で、農林水産大臣から卸売業務の許可を受けています。福岡市場の開設者は福岡市役所。取扱金額は約560億円、数量は約30万トン。福岡都市圏の約220万人へ青果物を供給する市場です。